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    サンフランシスコのガレージ・ロック・バンド Sonny & The Sunsets のリーダーである Sonny Smith の新作『Sees All Knows All』は、Sonny 自身長年の夢だった来日公演に合わせて制作されたアルバムである。演劇でのモノローグをイメージして制作されたという今作は、Sonny & The Sunsets のメンバーでもあるミュージシャンたちと共にレコーディングされた。そのバックトラックに Sonny がスポルディング・グレーのスタイルで歌っている。5年前にサンフランシスコ近隣の The Mission に住んでいた頃の風景を描写したという歌詞にのせた彼のスポークン・ワード調のボーカルは、ルー・リードの作品を彷彿させ、The Sunsets のガレージ・サウンドが重なることで、まさにサンフランシスコのシーンを象徴するかのような作品が完成した。


    ーーこんにちわ。ソニー・スミスさん。まず、ブレイクダンスも得意でビリー・ジョエルのビル・エヴァンス調ピアノ弾き語りも得意だったという子どものころの話を……。夢見がちな子供でしたか?

    Sonny Smith : 僕はテレビ番組のテーマ曲に本当に夢中になってた。そんなとき『チアーズ』『ヒルストリート・ブルース』と『Taxi』といった番組を知ってね。こういったドラマは全部僕の父さんが見ていたものなんだ。特に『ヒルストリート・ブルース』はお気に入りの曲だった。父さんと一緒に見てた。僕はとても若くて、若すぎて番組の内容を理解するまでには至らなかったけど、とにかく曲が好きだったんだよね。

    ーー音楽的な才能とライターとしての才能、どちらが先でしたか?

    Sonny Smith : どちらも一緒に渦を巻いてた。想像譚をでっちあげたり、話を誇張したり、そういうのをいつも話していたからね。と同時に6年生のときにギターをもらって。エディ・ヴァン・ヘイレンよろしくボディにテープを貼ったりして。手づくりでスケボーの雑誌をつくったり、ギターを弾いたりしてたんだ。

    ーー思春期に強く影響を受けたものはありますか? また、青年期に今のあなたの活動へと導くきっかけになったのはなんでしょう?

    Sonny Smith : 僕はただ、ひとつのものから次のものへと動いていっただけだよ。ブレイクダンス、スケボー、ボディボード、スノーボード、野球、とね。で、同時にニューウェイブ音楽に夢中になる時期があったり。友達のデューイとふたりでトンプソン・ツインズ、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド、ジェネラル・パブリック、U2、ティアーズ・フォー・フィアーズ、ザ・キュアーを見に行った年があった。全部、同じ一年の間だよ。夢中だった。でも、ニューウェイブの前にはオジー・オズボーン、アイアン・メイデンとかラットみたいなバンドが好きだったからね。だから、あるフェイズから次のフェイズに、という感じでね。いつもそうだよ。上から下へ!

    ーーまた、あなたは中南米やヨーロッパなどぶらりと旅してまわった経験もありますね。サンフランシスコのボヘミアン気質が、自分の中に宿っていると感じますか?

    Sonny Smith : ああ、僕の父さんはリチャード・ブローティガン、ジャック・ケルアック、アレン・ギンズバーグ、ローレンス・ファーリンゲッティ、そういったビートの連中が大好きだったからね。彼らの本を父はたくさん持っていて、若いとき、それらは自分にとってロマンティックなものだった。16歳とか、そのぐらいのころだね。うちの両親が初めて出会ったのも、サマー・オブ・ラブの時期、ゴールデン・ゲート・パークでのベトナム反戦集会でのことだったらしいし、僕は立派なサンフランシスコの子どもと言えるんじゃないかな。両親の友達もアーティストとかビート風の人が多かった。もしくはカントリー・ミュージシャンとか。17歳のころ、ローマ空港で『禅ヒッピー』を万引きしたこともあるしね。3年間ぐらい、ジャック・ケルアックになりたかった時期があったんだ。はしかみたいなもんだけどさ。

    ーーあなたのサイトの「Writing」のセクションに掲載されている旅行中の話がとても素敵でした。浮遊するアメリカ人としてのアイデンティティーやアイロニー、ストレンジャーとしての観察眼に溢れていて、でも、そこには孤独であることが伴うと思いますが、あなたにとって孤独とは?

    Sonny Smith : 孤独も旅の一部だね。今この瞬間だって僕は孤独だ。ツアーが終わって空港からのバスに乗ってるところでね。とても孤独だよ。死にたいぐらい。友達がいるバーでも行こうかな。女性のバーテンダーなんだ。お店に入って彼女を妻にしたい。でも彼女は既婚者なんだよね。という風に、僕は今この瞬間とっても孤独なんだ。

    ーー以前『San Francisco Bay Guardian』のインタビューでコラボレーションしてみたいと挙げていたウエス・アンダーソンやノア・バームバックもそうですが、子供目線で大人社会の悲喜劇を描いたもので、他にあなたが大好きな映画があれば、古今問わずいくつかあげてみてもらえますか?

    Sonny Smith : ベストは『スタンド・バイ・ミー』だね。大好きな映画はほかにもあるけど、『スタンド・バイ・ミー』がお気に入りだ。

    ーー最後の質問になりますが、あなたの夢見る力の奥底にある願いや想いとは?

    Sonny Smith : 最高のレコードをつくること。非の打ちどころのないようなレコードをね。キンクスの「Young and Innocent Days」みたいな曲、もしくはフェイセズの『ウー・ラ・ラ』、ニック・ドレイクの『ピンク・ムーン』みたいなアルバムやスモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズの「Tracks of My Tears」のような曲をつくること。こういった曲はこれ以上よくしようがないよね。僕もそういう、これ以上よくしようがないような何かがつくりたいんだ。

    ーーそういえば来日が決まりましたね!

    Sonny Smith : 実は子どものときに日本に行ったことがあるんだ。大阪と京都、あといくつかの町に行った。12歳のとき、長崎から広島まで行く反原水爆自転車ラリーに参加したんだ。大阪でホームステイして、そこにはお父さんとお母さん、ふたりの子供がいた。お父さんはクリーデンス・クリアウォーター・リバイバルのファンだった。彼のことで覚えているのは今ではそれぐらいだけど、また会えたらいいな。京都にもまた行ってみたい。そのときに泊まった僧院にまた行きたくってね。

    (質問作成:吉本栄)

    Sonny Smith インタビュー

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