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SWIM SWEET UNDER SHALLOW、新作EP『wéar dówn』インタビュー

SWIM SWEET UNDER SHALLOW が約1年ぶりの新作EP『wéar dówn』を 6/26 リリース!前作『Leisure』に引き続き、ギターロックの歌モノを目指したという本作は、今までにない不穏な雰囲気やゆったりとしたbpmの曲、5分を超える大作など新しい側面が垣間みれる意欲作。リリースにあたりバンド結成からバックボーン、EPのコンセプト、全曲解説を網羅したインタビューをお届けする。

SWIM SWEET UNDER SHALLOW

SWIM SWEET UNDER SHALLOW

Hiroki tanaQa、Midori Yoshida の2人からなるバンド SWIM SWEET UNDER SHALLOW。全ての楽器を演奏、録音、ミックス、マスタリング、ジャケットデザイン、MV制作を2人で行っている。2012年に自主レーベル hiraoyogi record を設立。2013年以降ライブ活動は行わず、音源制作とリリース中心の活動を展開している。

ーーSWIM SWEET UNDER SHALLOW (以下 SSUS) の結成について教えて下さい。吉田さんがメンバーを募集し、そこに田中さんが応募してきたという経緯があるようですが。

 そうですね。当初はベース、ドラムを含む4人で始まりましたが、すぐにメンバーが脱退し、それから現在に至るまで二人で活動しています。特に新しいメンバーを迎えようという発想はなく何となく2人で続いていますが、本人たち的には所謂「バンド」だと思っています。

ーーSSUS のお二人はどんな音楽のバックボーンがありますか?吉田さんは数年前のインタビューで当時好きなバンドに、スーパーカーやマイブラをあげていましたがどうでしょうか?


(Midori Yoshida / Vo, Gt, Ba, Programming, Others)

Yoshida : スーパーカーとマイブラは今でも大きな影響を受けたバンドとして不動です。その2つに加えてRadiohead、ユニコーン、90年代の邦楽なども良く聞いていました。


(Hiroki tanaQa / Vo, Gt, Ba, Dr, Programming, Mix, Mastering)

tanaQa : Radiohead、Queen、the Beatles、93年に解散するまでのユニコーン、GRAPEVINEなど

ーー現在よく聞いている作品や、注目しているアーティストがいれば教えて下さい。

Yoshida : Thundercat や Flying Lotus の周辺を探っています。

tanaQa : Dirty Projectors、St. Vincent、Sonic Youth、the sworn group をよく聞いています。

ーー制作からリリース、デザイン、流通、まで一貫して自分たちの手で行っているとのことですが、自分達で行っていて良かった点、大変だった点はありますか?

 良かった点→人数が少ない分イメージの共有がしやすく、作品完成までぶれることがなくなる。どうしても関わる人数が増えると折衷案を取らざるを得ないことがありますが、2人だけで物事を決定するのでその点極端なことができるかなと思います。

 大変だった点→録音作業、マスタリング、CD盤制作まで何の知識もない状態だったので、当初は失敗を重ねて苦労しました。CDの紙ジャケット制作時には色んなタイプの作品を手にとってみて素材、質感、形状を吟味して決めました。現在は作品数をこなしたことで多少はスムーズに行えるようになったかなと思います。流通、マネージメントはメンバー以外にも会社さんに手伝ってもらっています。

<ここからは新作について教えて下さい>

ーー新作のタイトル『wéar dówn』を訳すと『すり減る』という意味のタイトルが付けられていますが、作品のコンセプトを教えて下さい。

 前作『Leisure』から引き続き、ざっくり言うとギターロックの歌モノを目指しました。今までの作品にはなかった不穏な雰囲気やゆったりとしたbpmの曲、5分を超える大作など新しい側面を出せたかなと思います。

4thアルバムは『dubbing』、「多重録音」という意味のタイトルをつけましたが、今作では今までの作品に比べて音数が減っています。音数を増やすよりも一つ一つのパートをもっと自由に、もっと繊細に動かすことでギターを使った音楽がまだまだ面白くなると考えました。

左右に振り切ったギター2本が歌を支え、歌に絡まり合うという点が音楽的な今作のポイント、コンセプトです。
この作品の制作中に「何だか最近疲れてるなぁ、すり減ってるなぁ」とふと思うことがあり、そこからこのタイトルを付けました(ちなみに今はすっかり元気です)。

ちょうど録音していた曲も『wéar dówn』というタイトルが似合いそうなやや重い雰囲気だったのでうまくハマりました。あと曲の構成として1コーラスだけで聴けるものよりも、最初から最後まで通すことで徐々に盛り上がりが感じられるようにしたいなと思っていました。

その結果恐らくポップさは薄れてしまっていると思います(笑)。

ーー『wéar dówn』の制作背景について教えて下さい。楽曲制作や、レコーディングはどのようなものでしたか?

 半分くらいの曲は2018年にリリースした『Leisure』と制作時期が被っています。この2作は対になるイメージで、録音方法、使用機材も大体同じです。

『Leisure』リリース時にほとんどの形が出来ていた曲もありますが、「gruff?」「fardigan」はその他の曲にない色を付ける意味で書き下ろしました。

「ただの未来」はバンド史上初めて3回もサビを繰り返しています。特に意識して構成を決めたわけではないのですが、自然とそうなったのは二人で「自分たちなりの歌モノをやってみよう」と話していたのが影響しているのかもしれません。

曲の構成がテンプレート化しないように、ということを近年強く意識しているのですが、その結果日本で一番王道な構成を持った曲が出来上がったのは面白い発見です。

楽曲制作に関しては、これまでコード進行を決めてから構成やアレンジがある程度見えてきた後に歌のメロディ付ける方法が多かったのですが、今回は「歌モノ」を意図せずして歌のメロディが先に出来て後から他の楽器を肉付けしていった曲が偶然に収録されました。「ただの未来」「夏のかげろう」「Ginger」がそれにあたります。

『Leisure』から全曲アレンジはタナカ。タナカのギター2本で強引に引っ張るアレンジにより、デモから大きく雰囲気を変えた曲がいくつもあります。

自分たちにしては珍しく、ほとんどの曲は比較的すんなりとレコーディングが進みました。唯一「ただの未来」は構成が決まるまでにかなり時間を要しています。5分以上ある曲を歌モノとして成立させ、かつ面白くするために無理矢理ねじ込んだような間奏を入れてみたり、フィールドレコーディングした音を足したりしています。

EP『wéar dówn』の試聴が開始!

ーー作品全体を通して2000年代のインディーポップ/インディーロックのような少し懐かしい印象を受けました。メンバーによるEP『wéar dówn』の簡単な全曲解説をお願いします。

M1「gruff?」: 全体の雰囲気を総括する曲として最後に出来たのですが、どの曲よりも一番不穏な響きになってしまいました。歌は当初入れないつもりで進めていましたが曲をリードするフレーズをシンセで入れていたらレコーディング時にタナカが歌にしちゃいました。

タイトルは「無愛想ですか?」という意味合い。今までのバンド史でこれほど不穏な曲はなかったと思いますが、それを二人ともすんなり「これ1曲目でいこう!」と決めたことによることからこの言葉をチョイス。「どうだ!」という心意気と「これ大丈夫かな…」という自信のなさが同居してます…。

収録曲「ただの未来」MV

M2「ただの未来」: サビの「どこまで」の「でー」の高さが男性が地声で歌ったらギリギリさが出て良いと見越して男性ボーカルを想定していました。ただこういう曲で女性ボーカルが歌うのがあまりないからやってみたら?という提案があり選手交代。歌ってみたら気怠さが出て独特の雰囲気になったと思います。仮タイトルは「遅かれ早かれ」。

M3「fardigan」: 2019年の初頭に作った曲。もう1曲候補があったのですが、この曲が入った方が全体が締まるかなと思って採用しました。歌詞がうまく作れたなぁと思いつつもその歌詞に見合ったタイトルが思いつかず、その結果つけた「fardigan」は造語。大げさにいうと世の浮き沈みについて歌っています。

M4「Laundry」: 軽快なテンポの歌モノ、は今までの作品になかった要素。ただアレンジ面での落としどころが難しかったようです。海がテーマ。海なし県で育ったので海への憧れが強いです。学生の頃友達が海にデートに行ったとか悩んだ時に海に行くっていうのを聞いて羨ましかったことを思い出して書きました。

M5「夏のかげろう」: この曲が今作で一番最初にレコーディングした曲。なので実は何回か「夏」を通り越してきました。夏前というナイスなタイミングでリリース出来て良かったです。「風にとけてく」でサビを押し切るところ、ギターでは同じフレーズを繰り返すことはあっても歌でやるのはこの曲が初めて。

M6「Ginger」: 「gruff?」に次ぐ不穏なイントロと気怠さが全面に出た曲。歌謡曲にしてもいいくらいの曲調を無理矢理ギターで押し切りました。歌入れは力が入りすぎて録り直しになり、極限に脱力した状態を意識しました。仮タイトルは「愛はかげろう」。「かげろう」シリーズです。タイトルまで歌謡曲、ただ本当の意味合いは「愛の歌」とは程遠い意味ですが…そこは秘密。

ーー2018年の8月に発表したEP『Leisure』ではこれまでの作品から一転し、歌モノ色を強めた内容になっているとのことですが何か転機はありましたか?

 それまでの作品でも常に自分たちではいわゆる歌モノ、しかも結構ポップな作品を作っていると思っていましたが、3rdアルバムリリース時にあるインタビュアーさんから「ポップさを狙わずに作ったインディーロックっぽく聞こえる」という意見を聞き「???」となりました。

当時はまったくわからなかったのですが、その後ふと3rdアルバム『focus』を聞いていた時に「あーなるほどなぁ、これはポップスとはちょっと違うな」と合点。そもそも歌を引き立たせようとしてないってことに気づきました。

それは昔から狙っていたことでもあり、好きな音楽の形でもありました。歌と演奏のせめぎ合い、歌も演奏の一つのパーツであり、演奏も歌の一つであるという音楽。

ただそのバランスを少し歌側に寄せてみたらまた新しい音楽が生まれるのではないかなと思ったのが『Leisure』や今作の出発点です。

結果としてどれほど歌に寄ってるかと言われれば、多分そんなに寄っていないと思います(笑)。これが一応自分たちなりの歌モノ。そもそも完全な歌モノを作ることにはそれほど興味がないのです。少しだけボーカルの音量が上がって、歌詞も聞き取りやすくなったとは思います。

1曲目の「gruff?」で「帯には足らず襷には長すぎる」という歌詞がありますが、これはポップスと自分たちの音楽の距離感を歌っています。ポップスというには歌が弱く、ロックというにはテンションが低い。

ーー今後の活動や展望について教えて下さい。リリースライブなど、今後決まっている予定があれば教えて下さい。

 『Leisure』の制作時期から非常にバンドの調子が良く、どんどん音楽が作れそうな予感がしています。もう3年近くフルアルバムをリリースしていないので、次はアルバム制作を行いなるべく早く発表したいなと考えています。

メンバーが二人しかいないということもあり近年ライブを行えていないのですが、昨年からサポートメンバーを入れ少しずつスタジオリハを行なっています。タイミングが合えばライブもしたいですね。

EP『wéar dówn』の配信はこちら

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