■『川本真琴&幽霊』(2012年)について
―はい、じゃあ次いきましょう。この1年前ですね、『川本真琴&幽霊』。佐内(正史)さんとはかなり前からの付き合いでしたが。
K:そうですね、うん。
N:ぼくは結局お会いしてないですね。
K:これはどうでしたか?
N:ぼく、これ好きなんですよね。これはね、より自由に。
K:あ、そうなんですね、へー。
N:入ってる楽器が少ないじゃないですか。なので、すっごい難しいんですよ。
―あ、かえって。
N:はい、これはエレキ・ギターと歌だけのバランスみたいな感じじゃないですか。で…、難しいんですよね、やっぱり。
K:あんまり客観的になれてないところってあると思うんですよ、こういう作品作るって、自分が作ってる側なんでわからないんですけど、ちょっとだけやっぱり佐内さんが入っているってことでアートの要素があるのかなあっていう…。ないですかね?
N:あると思いますよ。映画のサントラっぽいっていうか、何というか絵画っぽいっていうか、そんな感じがしますけど。
K:そういう感じになってればいいですけど、ヘタしたら高校生のデモテープっていう(笑
N:いやいやいや。
K:そこがわたし客観的になれてないんじゃないかっていう、すごい不安があって。
N:でもほら、そういう磨ききってない感触はすごい良いと思うんですよね。
―これはそもそも佐内さんと2人で作ろうって始めたんですよね?
K:そうですね。
―それは何だったんだでしょう?
K;急に出たんですよ、話が。CD作るって。
―ここでは全て書き下ろしでした。
K:すべて同じ時期に、1曲ずつ作って…。何曲作るとかは決めてなかったんで、とりあえず1曲出来た!みたいな感じで。あ、2曲目出来たーみたいな、そういう感じの進行でした。あんまりその、2人でこれからこれで音楽業界に挑戦する、つもりは全く無いんでやっぱり(笑)。何かホント、曲作ったらどんなの出来るのかなあ?みたいな感じでやってたんですよ。
N:うん、その、高校生のデモテープじゃないですけど、これをミックスする時に先にデモテープをくれたんですよ、これの。いいな、と思って。その感じが。
―そのデモテープって全くひとりで歌ってるやつ?
N:えっとね、いや一緒にやってるんじゃないですか? ギターと…。あれ、ひとりでやってるんですかね?
K:いやー、どっち送ったかわかんないんですけど…。わたしが弾いてるやつかもしれないですね。
N:何かね、その部屋感というか、その感じが良くて。
K:ああ、あれは確かMacから出て来る音をわざわざ録ったんですよ。ふふふ。
N:空中録り。へっへっへ。
K:はい。Macから出したらすごい気持ちいい音になったんですよ。スカーッみたいな、なんていうかノイズでも、売ってないノイズ。たまにそういうことになるじゃないですか、ラジオとか聴いたりとかしてて。まあラジオでもだいたい一緒なんですけどね。でも、あー面白いことになってるーと思って録って、それを送ったような気がします。
N:なるほど。あの、別にクオリティは高くはないんですけど、なんかコーンとくる感じがあって、面白いなあって。で、はじめに手を付ける時にその音に近づけようかなってちょっと思ったんですよ。
K:あー、そうなんですね。
N:それと紙をもらって。思いついたようなこと色々書かれた紙をいただいたんですよ。あれもちょっと面白かったですね。
―絵みたいなメモですよね。
N:はい、絵とワードみたいなものがあったり。
K:「雪が降ってる」とか書きましたね。
―あれは意外とわかりやすいです。
N:そういうのがあると面白いですよね。
―普通の人が見ると全くわからないものだけど、音と一緒になると見えてくる絵ですね。
N:発注書(笑)。あのやり方は何かいいなって思って。もともとのデモにしたって、人に聴かせていいなって思っているクオリティのものを渡してるわけじゃないですか。だからそれを言えば、もうちょっと前のアルバムの時の話ですけど、ドラム叩いてるやつあったじゃないですか? あれも良かったですね。
K:ありましたねー。なんか、わたしはけっこう最後にまとめる人じゃない、じゃないですか。マスタリングとかミックスとか。何というか、完成をさせるっていうことを考えてないんですよね。ああそうなったんだー、なるほどー、って進んでいくだけなんですよね。で、また誰かが入ってきて、そうなったんだー、なるほどー、みたいなライブ乗り…、ライブってそういう感じじゃないですか? ああ今日はこうなんだ、みたいな。
ちょっとそういうところがあるんですよ、音源制作に関しても。で、完成させる、完璧を求める感じとかも無いのは、最後までやらないからなんですよね。たぶん中村さんはそのへんがあると思うんですよ。わたし他のこと、例えば、ライブのときの服装とかに関しては結構あるんですよ。最後まで自分でやるんで。髪はこうして、バランスはこうで、これぐらいの感じで、よし完璧!みたいなのとか。曲とか詞とかも、これでOK、みたいなところが最後までやるとそうなるのかなって思うんですよね。CDに関しては割とアドリブみたいな感じなのかもしれないです、わたしは。そういうポジショニングっていうか。
N:うんうん。
―あと、あれか、最後の曲(「出逢いの星」)は佐藤優介さんがプロフェット5でトラック作った、買ったばかりの。
N:これは何かね、良かったんですよね。
K:…、これ全部振り返ってくんですか(笑)?
―飽きた?…、いや、あの、要するにこれ(『川本真琴&幽霊』)を解き明かしたい、というのが今日のメインでした。佐内さんのボーカル含めいまだよくわからず、でも個人的に一番好きですね。
N:まあ、やっぱりその大元の素材っていうか、デモが全てですよ、やっぱり。あの感触がグッときたんですよね。