"最強&狂のライブバンド" の称号を確認させた !!! (チック・チック・チック) のライブレポートが公開!
Photo by Kazumichi Kokei
“最強&狂のライブバンド”の称号を確認させた !!! (チック・チック・チック) のライブレポート&セットリストプレイリストを公開!11月1日、今年も騒がしかったハロウィンの余韻がいまだ残る渋谷に、チック・チック・チックがやってきた。国内3カ所をまわってきた今回のジャパン・ツアーも、ついにこの日がファイナル。京都、大阪での熱狂ぶりを聞きつけてきたひともきっと少なくないのだろう、開演を待つフロアではこんな会話もチラホラ聞こえてくる。
「昨日の大阪の動画、見た? ビリー・アイリッシュのカヴァー、ヤバいよね! あれ今日もやんないかな」。そう、図らずもハロウィンと重なった今回のツアーにあてて、どうやら彼らチック・チック・チックはスペシャルなプログラムを用意してきたらしいのだ。それが、ビリー・アイリッシュ「bad guy」のカヴァー。ソーシャル・メディア上でも話題となっていた大阪公演の動画を見る限り、そのカヴァーは余興のレヴェルを超えた、相当な完成度の高さ。この日の渋谷O-EASTに集まったファンとしては、是非あのカヴァーを東京でもやってほしいと思うのは当然だろう。
そんな期待と熱気が充満するなか、まずステージに登場したのは、京都の6人組、踊る!ディスコ室町。彼らがこの日のオープニング・アクトに抜擢された理由は、そのパフォーマンスを目の当たりにすれば明白。言うまでもなく、両バンドには“ファンク”という共通項があるのだ。
とはいえ、この二組の体現する“ファンク”は決して似通ったものではなく、むしろそのアプローチは対極と言ってもいいかもしれない。それこそジェームス・ブラウンに由来するオーセンティックなファンク・グルーヴを実践する 踊る!ディスコ室町 に対し、近年のチック・チック・チックは16ビートの粘りつくようなファンクネスは当然のように保ちつつ、そこに70’sハウスや現行のヒップホップ的なビート感覚を組み合わせた、極めてハイブリッドなダンス・ミュージックに挑んでいるのだ。
まさにその最新型となるのが、彼らの通算8作目となるアルバム『Wallop』。この日のライヴは本作の収録曲「$50 Million」で幕を開け、そのまま『Wallop』収録曲を立て続けに披露するところから始まった。2曲目に演奏された「Couldn’t Have Known」あたりが象徴的なように、『Wallop』はUKグライム/ダブステップ的なつんのめったリズムが節々でフィーチャーされており、この日のセットリストはそうした現在のバンドのモードを端的に伝えるものだった。
もっと具体的に言おう。今回の東京公演の本編で演奏された10曲のうち、6曲は『Wallop』の収録曲。それ以外の4曲は『Myth Takes』収録の「Must Be The Moon」以外はすべて2015年以降の楽曲でまとめるという、かなりストイックな曲目が組まれていた。キャリア20年のバンドがこうした野心的なセットリストを組むこと自体もさることながら、そのパフォーマンスにオーディエンスがここまで熱狂している状況というのは、あらためて思い返してもかなり凄まじいものがある。
「ハッピー・ハロウィーン!」。アンコールの声に応えて登場したニック・オファーはオーディエンスにそう告げると、2019年のポップ・シーンを代表する、あのベースラインが響き始める。そう、「bad guy」だ。恐らくかなり入念なリハーサルを重ねたのだろう。構成やこまやかな音色のチョイスに至るまで、すべての神経が行き届いた見事な完コピ。しかもそれがチック・チック・チックのプログラムにここまで馴染んでしまうのだから面白い。アンダーグラウンドのダンス・カルチャーに根ざしながら、メインストリーム・ポップの最前線にも敬意を払うチック・チック・チックのスタンスを端的に示す、最高のカヴァーだった。
アンコールではさらに人気作『Thr!!!er』の「Slyd」を演奏。さらにはバンドも予定していなかったというダブル・アンコールに応えて、『Thr!!!er』から「One Girl / One Boy」を披露し、この日は大団円。チック・チック・チックはいつだって最新が最高。またしてもそれを証明する一夜だった。
Text by 渡辺裕也
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