Lamp が主宰するレーベル Botanical House から韓国の謎のヴェールに包まれたアーティスト、公衆道徳 がデビューアルバムとなるセルフタイトル・アルバム『公衆道徳』を 3/1 リリース決定!レーベルの SoundCloud にてアルバムの全曲プレビューが開始されました。2015年、現行の宅録インディーとは一線を画す脅威的な内容の1stアルバム『公衆道徳』を韓国でリリース。このアルバムが、翌年の “ソウル・レコード・フェア” で限定盤LPとしてアナログ化される等、マニアの間ではかなり話題となったものの、韓国国内でもライブや公式活動は一度も行われておらず、未だにその存在がヴェールに包まれたまま。
text by 染谷大陽 ( Lamp / Botanical House )
え、これが韓国発の音楽!?
時々、オススメのCDを送ってくる韓国人の女の子が、ある日突然送ってきたのがこの公衆道徳。
これまで韓国の音楽に心の底から感服したことは正直一度もなかったものですから、「どんなものかな」と、まあそんなに期待して聴いたわけではありませんでした。
CDを再生。
1曲目、そして、2曲目。。
スピーカーの前に釘付け。
冒頭の「白い部屋」から最後の「結び目」まで、
全く隙のない完璧な出来。
――「隙が無い」とか「完璧」というのは、《曲、演奏、音作り、アイディア、音楽に対する姿勢や意欲、それら全てが望ましい形でアルバムとして結実した音楽純度100%のこの感じ》、はたまた《僕が求めていたのはこういう音楽だというこの感じ》、のことです――
フォーキーながらも、変拍子と和声がストレンジで面白い冒頭曲、
2曲目の出だしで、「あれ、ロックンロールかな、、」と思ったら、すぐに流れるようなコーラスが入ってきて、そこから切れ味抜群のアコギ、モジュレーションをかけたような音程感のヴォーカルと続き、ここでノックアウト。
これはすごい作品に違いないと確信しました。
初めてこのCDを再生し、3曲目半ばで、僕はその子に、その感動と公衆道徳に関する質問をぶつけるメールを打っていました。
全ての瞬間がとにかく凝ってるのに、全く嫌味ではなく、音やノイズが、初めからそうであったかのような必然性を持って入り混じっています。
アコギのピッキングやハーモニーなんかも凄いんだけど、それ以上に惹かれたのが、12音階からはずした音程の使い方。これがすごく上手で、音を揺らぎが様々な手段で効果的に使われているのが分かります。
6曲目「月たち」のアコギの揺らぎは、カセットテープMTR使ったのかなと勝手に予想しているんですが、この音程のずれ方が絶妙で気持ち良い!
5曲目「沼地」のガムランで使うようなピッチが甘い鉄琴みたいな楽器(これはなんていう楽器でしょうか)、これもすごく効果的です。
アルバム全体の印象は少し混沌としている。
でも、アルバムって、音楽って、それくらいがちょうど良いんですよ。
初めから掴めちゃう音楽より必ず長く楽しめるんです。
これは是が非でも日本でリリースしたいと思い、何人かの音楽業界に携わっている韓国人の知り合いやミュージシャンに”公衆道徳”について尋ねました。
みんなその存在は知っていたものの、申し合わせたように、「彼はこのアルバムをリリース後一切の公式的な活動をしていないし、誰も顔も連絡先も知らない」とのことでした。それが公衆道徳の韓国でのプレスリリースの宣伝文句なのかな?と思ったくらい皆同じことを返すんですね。
「なんかどこかで聴いたことあるような話しだな」「気になる人はこんな人ばかりだ」などと思いながらも、発売元のレーベルの連絡先を何とか掴みまして、無事、日本盤リリースまで漕ぎ着けたのでした。
Botanical Houseというレーベルをはじめて以来、自己顕示欲の無い宅録マニアが家で一人で作った音楽ばかりリリースしていて、今回の件で改めて自分が惹かれる音楽について思い知らされました。
で、この公衆道徳、本人が久しぶりにアコギを引っ張り出して録ったアルバムなんだそうです。
うーん、俄かには信じがたい。
<アルバム情報>
公衆道徳 / 1st Album 日本盤
2017年3月1日発売
BHRD-007
tracklist:
1. 白い部屋
2. 地震波
3. パラソル
4. ウ
5. 沼地
6. 月たち
7. 多分
8. 結び目
ジャケットは日本盤リリースに合わせて新しく作成、韓国盤はCD、LPともに廃盤となっている。
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